食文化をめぐる旅

年末に秋田にいってきました。

昨年につづき2回目の訪問ですが、今回は秋田名物「しょっつる」と「生ハム」の仕込みを目的とした食の研修旅行。

まずは去年に続きお世話になるOさん。Oさんは秋田市の近郊の山間部にてダムの建設現場小屋(いわゆる飯場ですね)を利用した生活をしていて、生ハム作りのプロフェッショナル(もちろん他にもおもしろい仕事をしている)。地元の良質な豚肉と山のきれいな風をつかって本当においしい生ハムを作っています。初日の夜はOさんのおもてなしメニューに舌鼓。

これほとんど自家製。すごー! 比内地鶏の薫製、地元八幡平の牧場の豚肉の薫製、いぶりがっことクリームチーズ、鴨肉の薫製、卵の薫製しょっつる漬け、干し柿バターサンド、なますと小豆島オリーブ。どれもうまい!素材が豊かだなーと思います。

名物のきりたんぽ鍋も自家製。ご飯を半殺しにつぶして杉の棒に巻いていきます。専用の道具を作っていて、炭火で焼く。これだけでも絶対においしいはず。そしてこの移動式囲炉裏が欲しいなあ。

きりたんぽ鍋。しょっつるとセリが効いていておいしい。

毎日でも食べれるな。

 

次の日はOさんに紹介された男鹿のカフェ&民宿「ににぎ」にお邪魔してオーナーのお母さんに「しょっつる」を学びました。

「しょっつる」はハタハタを使った魚醤で秋田の伝統調味料ですが、最近作り手がおらず消滅の危機にあると聞きました。ハタハタは12月の秋田の沿岸に押し寄せるように産卵に来る魚で、その時期に採れすぎて余ったものを各家々で保存食にしたものでしたが、乱獲と生態系の変化で最近余るほどの量がとれないのだとか。一時漁獲制限をしていたことも「しょっつる」の伝承に影響したようです。味はナンプラーと似ている物の、ハタハタ特有の上品なうまみに満ちていてまったく臭さがありません。

作り方、塩加減も各家庭で違うのだとか。今回はお母さん流の仕込み方を教えてもらいました。

まず大量のハタハタ!!! 12月の限られた時期に市場から直接仕入れてくれていました。今年はとくにハタハタが来てすぐにいなくなってしまったようで貴重品。外はずっと零下なので半分凍っています。

一匹一匹丁寧に頭と内蔵を取り除きます。

皮にぬめりがあって切りにくいのと寒さで手がかじかんでいく作業。

こういう作業はやはり床がよろしい。みんなでやるのも楽しい。

さばいたハタハタに適量の塩をまぶして樽につけ込みます。この状態でそのまま3年おくだけ。これだけでおいしい液体が出てくるのです。やはり塩蔵は一番シンプルな保存方法。最初の仕込み時期が寒い冬の間に行えば、塩によって腐敗することなく熟成されていくのを待つのみ。

ちなみに貧乏性で好奇心旺盛な私たちは頭も捨てがたく、頭だけの「しょっつる」を仕込む。

雑味はあるもののうまみも強くでるのだそう。

夕食はハタハタづくしの手料理。だまこ鍋にハタハタ唐揚げ、ハタハタ寿司まで堪能しました。

 

最終日は生ハムの仕込み。雪の中Oさんが「ににぎ」まで材料とともに教えにやってきてくれました。

立派な八幡平ポークが並びます。

枝肉をさらに血管をしぼって血抜きをし、大量の塩をもみこんでいく。

やってみるといろんなところに血管や穴がある。丁寧に塩をもみこむのがポイントです。

衣装ケースに塩漬けにして約一ヶ月置いて水抜き。そのあと熟成して来年の冬にできあがるということ。

ちなみにそのまま2、3年寝かせるともっと熟成されてうまい。当然ですが、ちゃんとした材料とちゃんとした環境で保存するからできるでしょう。仕込み時期が寒くないとやはり腐敗してしまいます。完全に塩漬けになっているから暑い夏も乗り越えられるのです。ちゃんと寒い冬にこそできる技があって、それを支える環境があるってすばらしいことです。

なんだか「しょっつる」も「生ハム」も単純なことなのに、どうしてみんなできなくなったのか不思議な感じがするくらい自然な行いに思えました。また、やる気や好奇心はさることながら、家の中での保存ができる寒い場所や納屋のような広い場所がなくなってきたのだなと思いました。

外はなまはげが出そうなくらい寒い。

来年からの楽しみが増えました。

 

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