ちくちくぼんぼんオープンを迎えて

2年前コンペでとった公共事業が完成し、ようやく明日(7月1日)オープンを迎えます。

僕たちにとっては初の公共建築で、初めは仕事の進め方すらわからず苦労しましたが、福井の中山間部の集落に住み込み、これからの「公共」というものをいかに自分たちの暮らしに近いものとして考えてもらえるかということをテーマに取り組んだ仕事です。

言い訳のような市民参加ではなく、実際に外壁に使う材料を住民とつくるという無謀!?なことにも挑戦しましたし、施設名の「ちくちくぼんぼん」も公募で完成間際に決めるというスケジュールに文句を言って、大学を巻き込んで何度もワークショップで考えて決めました。仕事の進め方からデザインまで、ある意味公共に慣れた設計事務所ではあり得ないことを実践できたかなと思っています。

「建築は使う人がつくるもの」と常日頃おもって設計をしておりますが、これからの公共施設はつかいこなしてなんぼのものです。(本当はいままでもそうなのですが)

一部の人や一時期しか使われないハコモノに対し、住民みんなが、たのしくアイデアをだして次の時代を乗り切る船のように使う建築になればと切に願います。

以下は、施設のホームページに使ってもらえた建築のコンセプト&ストーリー

「改修した校舎で冒険の旅にでよう!」

チキチキバンバンという映画は、男やもめで二人の子連れの発明家が、放置されていたオンボロ自動車を修理すると、車がなぜか意思をもち空を飛んだり水の上を走れるようになり、子どもたちと一緒に冒険の旅にでるという心に夢と感動を与えるミュージカル映画の傑作です。旧竹田小学校改修において設計者として考えたのは、この建物が単に宿泊施設や地域のコミセンとしてだけでなく、都市の住民との交流や、人と人のつながりをメンテナンスして持続的に使い続けられるものとして、新しい産業や雇用が誘発されるような多様なコミュニティが発生する場として竹田のみんながこれからの時代に冒険の旅にでるようなものにしたいということでした。これまで公共建築は「ハコモノ」と呼ばれ、限定された使い方で限定された人しかつかわないものになってきましたがこれからの時代は建物を「つかいこなす」時代だと思っています。「ちくちくぼんぼん」を使う人、運営する人みんながあたかも建物に意思があるかのようにどんどんアイデアをだして使いこなしていってほしいと思っています。

「イイタを使った外装デザイン」

外壁には杉のルーバー材を茅葺き屋根のように並べ大きな民家のイメージで地域のランドマークとしました。昔の「結」の精神を活かした住民参加型の仕組みづくりとするために、一部には杉と樹脂の複合新素材を開発して使っています。竹田地区では「結」のことを「いい」と呼ぶためこの新素材の板のことを「イイタ」と名付け、実際に地域の人や学生と一緒にワークショップで製作しました。

イイタはポリエステル樹脂と木材を一体成形します。地域の材料をつかいながらどんな形状のものでも自由に成形できるものですが均一な製品ではないため職人がつくれない素材です。そもそも東京大学の吉田博則さんがコンピューターをつかって木材を削り、樹脂を流し込んで作るデジタル時代の新素材でしたが、これを応用することで公共工事において住民参加のものづくりをする意味が生まれるのではないかと思いました。

出来たイイタも杉のルーバーに彩りを加えるおもしろい素材になりました。自分たちで自分たちの地域の建物をつくる。原点に立ち返った視点で新しいこれからのものづくりが出来たと思っています。真夏の10日間のワークショップは本当に疲れましたが学生や地域の方との労働の共有はとても為になりました。

これまでの観光のあり方が変わってきていて、景勝地や食べ物だけではお客はこなくなってきていますので地域の方との共同作業や日常生活の時間の共有などは、これから始まる体験プログラムでも地域づくりのヒントになると思いました。

「100人が泊まれる自由度の高いデザイン」

内部の建築計画においては、要求された100名泊まれる宿泊機能とコミュニティセンター機能とが共存するようなものにするため、旅館業法の面積や大きな空間をとる為の構造的な制約でとても苦労しました。旅館業法の面積制限を守ると100人が宿泊できるようにするには和室にするしかないのです。設計では一部を小上がりにした立体的な和室として100人収容可能にしました。それでも子どもが対象とはいえ将来的にはいろいろなグループの宿泊に対応できるように2人部屋から36人の大部屋まで幅広く対応可能なプランとしました。

内装は既存の学校の記憶や地域の素材である杉材を使うことをテーマとして新旧の対比を感じることができる内装設計にしました。

家具や扉などに杉材を使い、ゆっくりくつろぐことができる空間と既存の教室をそのまま残した懐かしい空間を使い分けられるようになっています。

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